ポートフォリオ・マネージャーの一日

とある投信会社の運用部署の光景高そうなスーツを着て、高級な椅子に座り、オレンジ色した英字新聞を片手にした男は、電話の向こうの誰かと、今日の相場についていかにもそれっぽい会話をしていた。デスクのPCのBloombergやらReuterなどの端末を叩いてそれっぽいグラフやプライスを確認すると、「いまだな」みたいな呟きとともに社内のトレーダーに発注指示を出した。読みは当たった。今日は旨い酒が飲めそうだ。そして、場がひけて夕方になると紅茶を飲みつつ今日の自分のポートフォリオの振り返りをする。定時を過ぎればさっさと退社、時間外勤務なんてダサいことは一昔前の話。オフィスの近くにあるジムで一汗流し、その後は友人や大切な人と一杯。足元のマーケットの話題を酒の肴に、明日の投資戦略を共有する。イメージされやすいポートフォリオ・マネージャーだとかファンドマネージャーの一日ってこんな感じなのかもしれませんが、実際の運用担当者はもっと地味です。上に書いたようなカッコ良い運用担当者なんて新條まゆ先生等の漫画だったら出てくるかもしれないと思われます。さてそんな与太話はともかく、ポートフォリオ・マネージャーの一日です。元々は http://twitter.com/hachigo はちごさんが債券ディーラーの一日を書かれていたので、釣られて書いてみることにしました。ポートフォリオ・マネージャーというと自分で発注指示を出しているファンドマネージャーというイメージですよね。しかし昨今は通貨選択とか外貨投信とか思わず「ふざけてんの?爆発するの?」といいたくもなるような商品が増えている流れを受けて、運用を再委託するファンドや、他の運用会社のファンドを買い付けるファンド・オブ・ファンズが新規設定ファンドの9割程度を閉めております。そんなわけでここでご紹介するのは、運用を海外の大手運用会社に再委託している場合の日本の投信会社のポートフォリオ・マネージャーの一日です。06:00 起床朝は苦手なので、誰よりも早く会社について雑巾がけとか無理。仕方なくお茶でも入れつつ、PC立ち上げてニュース見たりBloomberg付けてマーケットを眺める。朝会の担当だったやっべーとか思いながら昨日のマーケットを振り返る。Bloomberg適当ぶっこいてんじゃねえぞ、そんなわけねえだろ馬鹿なの?とかツッコミをいれながら見ている。しかし冬の朝は寒い。8:00 出社マーケットに携わる人間の中でも再委託型ポートフォリオ・マネージャーの朝はとっても遅い。なぜなら、発注とトレードは前日の夜にニューヨークやボストンやボルチモアの再委託先の運用会社が全て終わらしているから。なもんではやくきたところでどうしようもない。というのが本音。8:30 Morning Meetingわらわらと人が集まってきて昨日のマーケットと今日の予定を連絡。後述するがマーケットよりも顧客向きの仕事がおおいことからこのMeetingは結構大事だったりする。9:00 トレード処理前日夜に再委託先が行ったトレードを全件処理する。ファンドは何本かまとめて管理していることもあって伝票の洪水になったりする。ファンドとしてのガイドラインも守らなくてはいけないので、トレードは一件一件チェックするがリバランスとかすると100件位余裕で飛んで来るので手で処理することは不可能。チェックするシステムを組んでいる。それでも自社発注ではないこともあってか時々ありえないトレードが入っていたりする。自分「ねえなんでブラジルの株買って来たのに、IOF課税分上乗せして為替とってきてないん?」アメリカ人「担当者が忘れてたみたいメンゴメンゴ」自分「ぶっと・・・・ノープロブレム オーケーオーケー」自分「IPOの払込期日明後日なのにまだ払込指図明細きてないんやけど」インド人「え、あ、まじっすか、Activeサンゴメンねー。ちょっとやりかた勘違いしちゃったエヘ!ノープロブレム安心シテよー」自分「はやくしろ」自分「ADRってのは分かるけどこれちょっと高すぎない?」イギリス人「(イエローモンキーは本当に細かいから・・・・)あー、ブローカーに問い合わせみるよ」自分「・・・・イラッ」自分「有償増資に対するアクションの通知着てないのに付与された権利勝手に売却してるけど、これってそういうことでいいんだよね?」アメリカ人「うん、えっと、たぶんそういうことだと思うけど、それしか考えようがないけど、ぶっちゃけよくわからん」自分「えっと、確認、しろ、なう」自分「伝票が まだ こないよ」バックオフィス「あー今からおくるから」自分「・・・・・・・・」そんなことをやってると時間が過ぎていく。11:00 マーケット急変インフレ懸念も続いているものの、今日は平穏なアジアマーケット。昨日の米国決算が割合好調な結果だったのも安心感を読んでいるようだ。しかしイベントは誰にも予測できない。タイのSET指数が何の前触れもなく2%以上下落。その後もじわじわと全セクターが売られている展開。何が起きたんだとマーケティングサイドから問い合わせが来る。顧客用の緊急レポートを作成。販売会社やHPを通じてタイの政治的不安の高まりが背景による下落である旨を説明する。11:30 昼休み再委託型のファンドに日本株なんてあるわけないので、ぶっちゃけると日中は東証をガン無視している。日本株なんて飾りですよ、偉い人にはごにょごにょごにょ。しかし運用部門は今も昔もマーケット時間通りの昼休みである。12:30 外部ミーティング再委託型ファンドが流行っているこのご時世であるので、海外の運用会社の運用担当者が商品の売り込みに来る。やっぱ外人がそれっぽく喋ってるのはかっけーな、外人羨ましいとか思いながら話を聞き流す。14:00 資料作成運用担当者の一番大事な仕事のひとつは資料作成です!とは言えないものの実際にはたくさん資料作ります。週報や月報に始まり内部管理資料やら投資検討会議の資料やら臨時レポートなんかも作っていたりします。15:00 システムメンテナンス何故かEUC黄金期から抜け出せないため、自家栽培のシステムをメンテナンスしたり新しいEUC作ったり改良したりしている。さっさとシステム開発費用出してください。16:00 販売会社勉強会自分で運用しないポートフォリオ・マネージャーの仕事は「運用担当者」という肩書きを持っている傍ら販売会社の勉強会も行ったりします。新興国の株というなかなか手のでにくいジャンルの商品について現場の若手行員さんや社員さんの警戒感を麻h・・・緩和してもらうべく色々な切り口の材料や小ネタをばらまきつつ、勉強会をこなす。18:00 運用再委託先とMTGタイの相場急変をうけて、タイの政治環境についてどう見ているのか委託先の運用会社に電話会議。でも大体ストロングバイで全てが片付いていてしまうなんてことはないよ!ちゃんと打ち合わせてるよ!イギリス人のおじさんの英語が聞き取れずに、「あーいえすいえす」状態に陥る。トイレで泣く。19:00 新規ローンチファンドの作業新規でファンドをローンチすると言っても、再委託すると相手は大体欧州米国にいるので夕方以降じゃないと連絡がつかない。そのため夕方以降に連絡などを含めて新規ローンチファンドの作業をすることが多め。20:00 ごはん・・・・社内からも再委託先からも板挟みになるとどうなるか。仕事が延々と終わらないのである。しかたないのでコンビニ飯。今日も海苔巻きをほおばりながらBloombergを叩く。22:00 マーケット概観いくら運用しないからといっても運用周りの実務を請け負っている以上、マーケットをシカトすることもできません・・・。ざーっと欧州までの動きを見て、気になるレポートを読んだりする。でも帰りたいので印刷して帰りの電車で読む。途中で寝て何読んだか忘れる。満員電車に揺られて「今日も俺は土方だった・・・・。しかし頑張った」と自分を励ます。まあでも総じて仕事は面白い。

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個人向けの資産運用業を営んでいます。主に投資信託です。

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